【歩み寄る独裁者:1】歓迎する米韓、日本は拉致被害者奪還に期待感
先月初めごろ、緊張状態が続いていた南北関係に対話の兆しが出てきた。
北朝鮮と韓国の首脳が今月、会談を行うことで合意したのだ。
この南北対話の兆しに米トランプ大統領も自身のTwitter上で、歓迎する姿勢を見せた↓
Possible progress being made in talks with North Korea. For the first time in many years, a serious effort is being made by all parties concerned. The World is watching and waiting! May be false hope, but the U.S. is ready to go hard in either direction!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) March 6, 2018
トランプ大統領の3月6日のツイート。北朝鮮の対話への姿勢を評価しつつ、「(対話の方向が)どちらに向かっても、われわれ(米国)は向き合う用意がある。」と余裕を見せた。
南北首脳会談は報道発表によれば、今月27日に予定されているという。
2月の平昌五輪開会式に金正恩氏の妹が出席したことにどんなメッセージが含まれているのかさまざまな憶測が飛び交っていたが、北朝鮮はこれ以上緊張を高めることよりも対話路線へ舵を切ることを選択したとみられる。
それに先立ち、金正恩氏は自身の妻を引き連れて中国を電撃訪問した。
中国は米韓との対立を先鋭化させていた昨年の北朝鮮の強硬な態度に対し、他国と歩調は合わせつつも寛容さを捨てなかった。
この電撃訪中の裏には、中国に連携の意思を確認しただけでなく最も窮地に追い込まれていた時期にある種の寛容さを享受したことへの感謝の意も含まれているのではないだろうか。
また、「非核化」という北朝鮮にとっては到底受け入れがたい要求をのむ以上いまだ対立関係にある米韓との対話のテーブルにつく前に訪中し、お墨付きをもらうねらいもあるように思える。
一方で日本の対応は完全に後手に回った。
3月初旬に首相や首相夫人の不適切な関与が疑われていた森友学園問題において、国有地の売買にかかる決裁文書が改ざんされた疑いが朝日新聞によって報じられたからだ。
安倍政権は、1年以上加計・森友問題の疑惑を完全には払拭できないままだった。
そこで、それに対する批判の高まりを挫くためこれまで繰り返し北朝鮮の脅威を煽り続けてきた。
今回の南北融和の動きに対しても決して警戒を解くことはなく、相も変わらず圧力をかけつづける方針を強調した。
盟友トランプ米大統領とともに最大限の圧力をかけ続けてきたものの、そのトランプ氏が一転北朝鮮への猜疑心を解いたともとれる発言をしたことにより日本ははしごを外された格好だ。
ただ、そんな日本も遅ればせながらも6月に日朝首脳会談を行うことで調整を進めている。
日本にとって最大の懸案事項は北朝鮮のミサイル発射、核実験ではなく拉致被害者全員の帰還である。
2002年、日朝首脳会談後、拉致被害者の一部が帰国を果たした記憶が当時官房副長官を務めていた安倍首相には強く残っているに違いない。
当然のことながら未解決のまま数十年間くすぶり続けてきた国際問題が拉致被害者全員の帰還という形で解決すれば安倍政権最大の功績として見なされることになるだろう。
しかし、忘れてはならないのはそもそも安倍政権は拉致問題を政権浮揚のためにことあるごとに持ち出しているし、拉致被害者の一人横田めぐみさんの母から官邸に届いていた“陳情”の手紙を2年間も無視していたという事実もあるということで、仮に今度の日朝首脳会談で拉致被害者全員の帰還が実現してもそれは安倍政権の功績というよりも金正恩氏自身の免罪符として機能する向きが強いことだ。
それでも、拉致被害者全員の帰還という長年の悲願を達成できれば平成政治史に刻まれる外交成果となることは間違いなさそうだ。
大事なのは外交成果を獲得し、国民から向けられている不信感を払拭することではなく拉致被害者全員が無事に帰国を果たすことだ。
はたして、安倍政権は気分屋のトランプ大統領と意外と戦略家気質である金正恩氏を“アンダーコントロール”できるか?
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