置き去りにされる被害者たち
昨日、森友問題で揺れる財務官僚のトップ福田事務次官が週刊新潮に報じられた女性記者に対するセクハラをはたらいたとして辞任することが報じられた。
本人はあくまでも嫌疑を否認しているが、スクープ元の週刊新潮が音声記録を公開したため事実上認めざるを得なくなった形だ。
週刊新潮が公開した音声記録。声紋鑑定では本人である可能性は90%以上(週刊新潮社)
福田事務次官が取材に来た女性記者にセクハラ発言を浴びせる生々しいやり取りが記録されている。
全国紙の政治部はガチガチの男社会かと思えば、実は割合に女性記者も多い。
政治家は本音と方便を使い分けるプロなので、本音を引き出すのは容易ではない。
そのため、男性の政治家や官僚の取材に女性記者をあてがうことで警戒心を解き本音が出やすい状況に持って行く手法がしばしば取られるのだそうだ。(これはこれで、女性を情報の駒扱いにしているとの批判が出そうだが)
財務省は森友問題において籠池被告との国有地売買に関わる手続きを担った官庁であり、また公文書改ざんという法治国家における重大犯罪に手を染めた本丸でもあるのだから特に真相を突き止めなければならない取材対象であったことは言うまでもない。
実際、セクハラ発言を浴びせられた女性記者は複数人に及ぶとされる。要するにマスコミ各社が財務官僚トップの取材に女性記者を充てていたということだ。
当初、福田事務次官本人を含め財務省側はセクハラの事実を否定した。
さらに、麻生財務相も「被害者が実名で名乗り出ない限り事実関係の把握ができない」との認識を示した。
本人の声とされる音声記録まで出てきている以上被害者の存在は明らかであるのだが、それを実名で名乗り出るよう恫喝するとは不見識にもほどがあるように思えてならない。
TBSの元ワシントン支局長に合意無く性的な関係を迫られたとして実名で名乗り出たジャーナリストの詩織さんに対する社会のバッシングは目を覆いたくなるものだった。
被害者として名乗り出たはずが、女性というだけで「ハニートラップを仕掛けた」と勝手に言われてしまう。
今回の場合においても福田事務次官に女性記者がハニートラップを仕掛けたと主張する者が散見された。
しかし、音声記録を聞けば分かるが女性記者は福田事務次官のセクハラ発言に明確な拒否反応を示している。
これをどう聞けばハニートラップと解釈できるのか。
理解に苦しむ。
ところで、2年前稀代のケチぶりが発覚し辞任に追い込まれた舛添要一前知事の後継を選ぶ都知事選挙が行われた。
その際野党統一候補として立候補した鳥越俊太郎氏。
この鳥越俊太郎氏も、過去にセクハラ行為をはたらいていたことを週刊誌にすっぱ抜かれた。
鳥越氏といえば、自身のジャーナリストとしての知名度に高をくくりまともな政策1つ用意してこなかったある意味でお花畑な候補だった。
セクハラ行為を報道されたことで、それまで清廉潔白なイメージがあった鳥越俊太郎氏は窮地に追い込まれた。
鳥越氏が立候補する前から立候補を表明していた宇都宮健児氏を下ろした以上野党陣営は劣勢の巻き返しに奔走した。
しかし、その焦りがとんでもない発言を生んでしまった。
動画!事務次官セクハラ問題で共産党にブーメラン!田村智子「実名明かさないセクハラ告発に怒ってます」 | KSL-Live! https://t.co/zq64Zof9pZ
— camomille (@camomillem) April 18, 2018
鳥越俊太郎のセクハラ問題では田村議員は「実名明かさないのは問題!」
財務省には「実名明かさないで当然だ」
このダブスタ。頭が、おか志位
なんと鳥越俊太郎氏を支援していた共産党の国会議員である田村智子氏は街頭演説で「(セクハラ行為があったのは)50年前の話」であり「被害者が名乗り出ない限り、でっち上げとしか思えない」などと陰謀論を披露したのだ。
そう、今回のセクハラ行為についての麻生財務相や福田事務次官の言ったこととまるで同じなのだ。
こうした経緯から分かるのは、セクハラや性犯罪に対する社会の不見識だけでなく、政治家自身もその認識の欠如が見られるということだ。
自身の受けた性犯罪やセクハラの被害が政争の道具にされた挙げ句名乗り出れば、まるで加害者扱い。
このようないわゆる“セカンドレイプ”がこの日本では現在進行形で広がりを見せている。
与野党問わず、政治家は二次被害を生まないよう慎重に言葉を選ぶべきでありまず守られなければならないのは被害者の尊厳であるということを認識しなければならないと思う。
政治家が認識を正せばそれが日本社会の淀んだ空気を変えるきっかけとなるかもしれない。
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